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「おお。もう蕾がついとるやないか。」 「しかし、わしらがここに入ってからもうすぐ一年がたつのか。 なんか感慨深いのう。」 いわゆる学ランを着た体格のいい男達が話している。 時は三月、世間一般で言う卒業の季節だ。 一年間の出来事を思い返すのに、これほど良い季節もあるまい。 「……ああ。」 何か思うことでもあったのだろうか。 学帽を被っていた男、富樫が目元を隠すように深く被りなおす。 「……辛気臭くしてたらあいつらに笑われちまうぞ。 『まだまだ修行が足りませんね。君たちは』とか言ってな」 もう一人の男、虎丸はわざとかん高い声を作り、かつてのマジシャンの物真似をする。 「そうだな。今度入ってくる新入生のことでも考えるか。」 季節はもうすぐ春。 出会いの季節でもあるのだ。 キリキリキリ…… 弓を引く音がする。 巨漢の壮年が、回転する的に向かって弓を射ろうとしていた。 髪の毛こそないものの、その体は鍛え抜かれており、一種の美さえも感じさせる。 覇気に満ちたそのたたずまいは、とても60を過ぎているとは思えない。 彼こそが、男塾全塾生の生殺与奪の権すら持つ、 「わしが男塾塾長江田島平八である!!」 地を震わせる豪声と共に矢が放たれる。 一瞬の後、的に突き立った。 「ほう。今日はこれか。」 そばにいた髭を生やした教官が確認に走るよりも早く、江田島は己が射た的を その鋭い視力で確認していた。 「起立っ!!」 授業の掛け声に、学生たちは勢いよく立ち上がる。 掛け声をあげたのは、メガネをかけた田沢である。 「本日でいよいよ今年度最後の授業となる。 そこで、本日の科目は塾長がじきじきに選ばれた。 速やかにグラウンドに整列し、心して拝聴するように!!」 鬼ヒゲという仇名の通りの姿をした教官が声を張り上げる。 「なんだかごっつい嫌な予感がするのう。」 「まったくだぜ。」 頭の頂上部と左右のみにパーマをかけた松尾と、リーゼントで矮躯の秀麻呂がそのような会話を交わしながら 移動を開始した。 「わしが男塾塾長江田島平八である!!」 その大音声に、この一年間でなれたはずの猛者たちが泡を吹いてひっくり返る。 一方教官たちの中には、感涙の涙をこぼしている者すらいた。 (不思議なものだ。時々この声を聞かないと落ち着かなくなるなんてな) 一号生筆頭剣桃太郎は柄にもなくそんなことを考えていた。 「本日は直進行軍を行う!全員直ちに回れ右し、前進せよ!」 珍しく塾長が直々に指示を出す。 その言葉通り、一号生たちは行動を開始した。 その日平賀才人は浮かれていた。 つい、目の前に浮かび上がった、不思議な白い光に入ろうとするくらいに。 いよいよ飛び込もうと心を決めたその時、地響きがするのが聞こえた。 (うるさいな!何だよ!) せっかく入ろうとしたのを邪魔されて、少し不機嫌になった才人は、文句を 言おうと後ろを振り返り、 ……そして迷わず道を譲った。 やけに体格のいい、学ランを着込んだ男達が、ハンマーなど思い思いの獲物を手に持ち 障害物を粉砕しながら迫ってきたのだ。 (いくらなんでもこんな集団には近寄りたくない) 才人の本音である。 その男たちは、白い光の前で立ち止まった。 「押忍!!教官殿質問があります。ここに不審な光があるのですが、どのようにすればよろしいでしょうか。」 先頭近くにいた田沢が、飛行帽を被った教官に声をかけた。 するとその教官はその男を怒鳴りつけた。 「貴様ら前回を忘れたのか!!何があろうとも、前進以外に道はない!! 何じゃその目は!私怨などないわ! ええぃ。桃よ、一号生筆頭として手本をみせてやれ!!」 その声に、指名された桃は、押忍と短く声をあげると、迷わず飛び込んだ。 しかし、それはただの不審な光ではなかった。 いつまでたっても桃がその光から出てくる様子はない。 それどころか光が段々と弱まっているではないか。 これが尋常の事態であるはずがない。 そう判断した伊達は行動することにした。 「仲間を見捨てるな!全員桃に続け!」 その声に、固まっていた男たちは、弾かれたように直進を開始した。 「待て!お前達!」 飛行帽がそう叫ぶも、時既に遅し。 光は消え、飛行帽と才人以外の誰もそこには残っていなかった。 爆発が起きる。 しかし、先ほどまでとは違う手ごたえを感じていた少女は、己の召喚が成功したことを確信していた。 (やったのよ。ついに召喚に成功したわ。これでゼロなんて、もう誰にも言わせない!) 生徒達が騒ぐ中、その少女-ルイズは、ニヤニヤしそうになるのを必死にこらえながら、 煙が晴れるのを凝視していた。 そして目を見開いて口を大きく開けてしまった。 淑女としてあるまじき行為ではあるが、とがめるものは誰もいない。 みな、同じような姿をしていたからだ。 煙が晴れたあとには、むさ苦しい男達が何十人も折り重なっていたからだ。 男達の使い魔 第一話 完 NGシーン 雷電「こ、これはまさか!」 虎丸「知っているのか雷電!」 雷電「これぞまさしく、中国において六千年前より伝わる神隠死!」 神隠し。この言葉は日本でよく使われているが、実は起源は中国にあることを知るものは多くない。 古代中国において、春家義弐亞と戦斗千尋という男達がいた。この二人は拳の道においてのライバル であった。ついに長年の決着をつけようと、二人は決闘をすることになった。 互いに一歩も引かず、まさしく死闘を繰り広げる両者。最後の力を振り絞り、一撃を繰り出そうとした時 激しい光がその場に溢れた。 観客が目を見開いたとき、その場からは二人の姿だけが消えていたという。 後年、この片方の戦斗千尋が見つかった。本人はボロボロになっていたが、意識ははっきりしていたという。 そこで、春家義弐亞の行方を尋ねたところ、悔しそうに 「あいつは武離箕琉の盾となって死んだ」と意味不明の発言をしたという。 この逸話が日本に伝わり、突然消えた人間が帰ってくる話として 千と千尋の神隠し、となったのは実に興味深いことである。 余談ではあるが、近年の研究によって、この春家義弐亞という男の名前こそが、ハルケギニアという名称の 基となったのではないか、という説が支配的になってきた。このことからも分かるように、この二人は、 何者かによってハルケギニアに召喚された、と考えるのが一般的である。 民明書房刊「考察!千と千尋の神隠死」(平賀才人著)
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妻から逃げたい男達の縁切り寺 にご ◆3t.0RpfR/o むさし ◆tpAqotMZDs ★ 太郎丸 ◆rX9TemfpVQ 胃 ◆z4FNMEA5QM バッタ ◆/ttdMSIutg 酸欠 ◆E.u7YvCRsk ほえお ◆iyT9T9B9JE 小鳥 ◆IPpRe2wuNU 黒 ◆XhRvhH3v3M ボットン便所 ◆tKRgq2vYa6 スマイル ◆uocz/2kyd2 へたリーマン ◆farOiNrhOY 完全 ◆I4WPirv3R2 モラハラ被害者 ◆bG/fY7TAcE サトル ◆dmciXzl.9g 陸 ◆Rzq.dsq6/A カツラ ◆u8P/r38GTE のぶ ◆vC.kHTi4RE ポン田 ◆s5JV4Ln.dg 浮気 ◆UNCmoLU71s→浮気 ◆3CyTh9X35o 大家族 ◆WB7bJGvswo→大家族 ◆bWB/EiCuuE 嫌気 ◆TgkgXQ.o2M マトモ ◆tvm6.CZ.n2 ★ ヴィラ ◆5ZEHAIhJts (softbank219206218121.bbtec.net) ☆ ベーグル ◆jBsR3p0Dnc (p7024-ipbfp302otsu.shiga.ocn.ne.jp) 秋田 ◆n76zuKk1mk (bbizu44-028.izu.jp) ★ 旧家夫 ◆uG0eNuxPyI 年下妻餅 ◆tzc2hiL.t2 (ocngw2.e-sadonet.tv) 奴隷 ◆F745V2l.lk (07001100684546_ac) 病人 ◆xO6wWf6fF2 (pl098.nas312.matsue.nttpc.ne.jp) ☆ 疲労 ◆stebHNe36k (KpS3oIX) 印の説明 無印:報告なし ☆:逃げられ回避(復縁) ★:離婚決定(逃げ・事実上の逃げられも含む) △:執行猶予 ▼:釣り・ネタ
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『えー皆聞こえてるかな?それじゃあただいまから一回目の放送を行いま~す』 「何ィッ!おのれッどこにいる!」 突然聞こえてきた荒木の声に私は警戒態勢を整え、周りを見渡す。 「おい!お前達ッ!気をつけろッそこら辺にあの荒木とかいうやつがいるぞッ!」 「気をつけるのは、ダイアー。おまえの方だ。無闇に大声を出すんじゃない」 アヴドゥルが私の忠告を無視する。あのあほが……。 「バカか!おまえは!やつの声がすぐ近くから聞こえて来るんだぞッ。周りには放送設備なんぞ無いし民家しか」 この瞬間、私は背中に衝撃を感じた。億泰に背中を殴られたのだ。(軽くだが) 「ちょっと黙ってろよてめえ。あれ見てみろよ」 億泰は私に対してかなり苛ついているようだ。鋭い目で私を睨みドスのきいた声で威嚇してくる。なぜだ?全くわからない。 とりあえずそんな疑問は脇に置き億泰が指差した方向を見る。 「なっなんだあれはッ」 民家の窓ガラスに不鮮明ながらも荒木の姿が映っている。奴の声もどうやらその窓から聞こえているようだ。 これはいったいどういう冗談だ?こんなことがありえるのか?いくら吸血鬼でもこんなことはできないし、波紋でも当然できない。 そこまで考えると、私は一つの可能性に気がついた。スタンドだ。 おそらくスタンドなら可能なのだろう。しかし本当に何でもありだな……。 「アヴドゥルさん。荒木のスタンドがあんたの言っていた『記憶を操る』スタンドならこんなことはできないんじゃねえの?」 「チッチッチッ。荒木にだって協力者の一人や二人いてもおかしくは無い」 「あっなるほど。それもそうだな」 「やっぱりこれもスタンドとかいう奴な……」 「待て。荒木が今から死者の名を言っていくみたいだぞ。話は放送が終わった後だ」 アヴドゥルと億泰は素早くメモを構える。私も渋々デイパックからメモを取り出し書く準備を整えた。 ……おのれ。こいつら、私の言葉を知能が低く話もできない赤ん坊の発言のように捉えおって。なんという屈辱だ。 * * * 『じゃあ、おおむねそうゆうことでよろしくね―――』 放送が終わった。私の知り合いで死んでしまったのはジョナサンとかいう奴とストレイツォ。 これで知り合いはツェペリさん一人だけになってしまった。 ストレイツォがたった六時間で死んでしまうとはな……。老師トンペティの下で共に修行してきた奴の死、さすがにこたえるな。 しかし……悲しんでいる暇はないのだ。許せストレイツォ。私は何とかして荒木を倒さなければならないのだ。 ジョナサンの死は……正直、それほど悲しくは無い。ジョナサンと私との関係はお互いに顔と名前を認知しているだけ。 奴が死んで少しは悲しかったが、何てことは無い。私は吸血鬼と戦う身であるため人の死には慣れていた。 「ジョナサン・ジョースター。ツェペリさんは気に入っていたようだがやはり大した事無かったんだな」 私は何とはなしにそっと呟いた。何の感情もこめずに静かに軽く言った。しかし、この発言がそもそもの始まりだったのだ。 「おまえ、もういっぺん言ってみろ。誰が大した事ないだってぇ」 億泰が再び私を威嚇する。なぜだ。今度ばかりは本当にわからないぞ。もしかすると、私がさっき言った言葉に関係があるのか。 「いや、だからジョナサン・ジョースターはやはり大した事なかったと言ったんだが……。すまない。死者を冒涜するのは最低の行為だな」 「そうじゃねえーッ!微妙にセリフ変えてんじゃねえよッ!おまえが『大した事無い』って言ったのは『ジョセフ』・ジョースターだろうがッ! ジョナサンとか言う野郎なんかどうだっていいんだよぉー!てめえ言い逃れしようって腹かーーー?」 「……え?」 この瞬間わたしの思考はショートした。わたしが『大した事無い』と、言ったのは『ジョナサン』だ。『ジョセフ』でも『ジョニー』でも無い。 つまり、この不良を気取っている若造は聞き間違いをしたと言う事なのか? 「え?じゃねえよ、なんか言いやがれッどうせてめえは由花子も大した事無いって思ってるんだろうがッ!」 ……こ、この少年、聞き間違えたというより、少し混乱してきているのではないか? 由花子とか言う奴、わたしは全然知らんぞ。なんだかヤバイ雰囲気になってきた。 「か、勘違いだ。君の聞き間違いだよ。それに由花子って誰だ」 「しらばっくれんじゃねえッ!この野郎ッ!ぶん殴ってやるッ」 億泰が拳を振りかぶる。まずいぞ、これは……。それにしてもこの億泰という男、頭悪すぎだろ。 どうする?このまま争いになるのはまずい。こいつにはスタンドがあるしなあ。とりあえずッ 億泰の硬く握られた鉄拳が私に襲い掛かる。私は素早くそのパンチを見切り、全く危なげない動作で拳を受け止めた。 老師トンペティによる荒行の賜物だ。 「誤解だッ!話を聞いてくれ」 「聞く話なんて、何もねえぜッ」 億泰が例のスタンドを発現させる。どうする。今度こそどうすればいいんだ?戦うしかないのか? 私は勝てるのか?この得体の知れないスタンドにッ。 「二人ともやめろッ!!!」 天をも割く大声が響いた。声の主はアヴドゥルである。 億泰はアヴドゥルの事を私よりかは尊敬しているのであろう。素直に私から離れスタンドを消した。 しかし、彼の目は依然私を睨んだままである。 「アヴドゥルよお。あんた聞いてなかったのかよ。こいつ確かに言ったんだぜ。『ジョセフ・ジョースターはやはり大した事無い』ってな」 「しかしダイアーは否定しているみたいだぞ。そうだな?」 「当たり前だ!億泰の聞き間違いだよ。わたしは『ジョセフ』ではなく『ジョナサン』と言ったんだ。 まあどちらにしてもわたしは死者を冒涜してしまったのだがね。それに私はジョセフ・ジョースターなんて知らん。出会った時に言ったはずだ」 必死の思いを言葉に込めて言う。アブドゥルは私を信じてくれるか? 「違う。アヴドゥル信じるな。俺は確かにこの耳で聞いたんだぜ」 アヴドゥルは真剣な眼差しで私を見つめる。おまえはうそをついてるのか、本当のことを言っているのかと、目で問いかけてくる。 私の目を見つめたままアヴドゥルがゆっくりと口を開く。 「私はダイアーが何を言っているのか。聞き取れなかった。私もジョースターさんが死んでしまって悲しかったからな……。 しかし、ダイアーが何かぶつぶつ言っているのは見た」 すかさず億泰が口を挟む。 「それだよッ!こいつはその時言っていたんだ。今はただ言い訳しているだけだぜぇ。こいつは俺達を敵に回すわけにはいかないからな」 『敵に回すわけにはいかない』どういう意味だ? 「なぜそう思う。私も場合によっては君たちに反抗するかもしれないぞ?」 「へっ、出来るわけないだろ。てめえの波紋で俺達のスタンドに勝てるとでも思ってんのかよ」 「何イッ!!私の波紋が、老師トンペティの下で長年磨き上げてきた私の波紋が君たちのスタンドに敵わないとでもッ!波紋を嘗めるなッ」 声を張り上げ叫ぶ。私はこいつらにいくら嘗められても構わない。しかし、『波紋』だけは別だ。 吸血鬼に対抗するため先人達が必死の努力で練り上げてきた波紋だ。 こんな若造に嘗められるわけにはいかない。『波紋でスタンドに勝てるかな』と、私自身が思ってしまったことがあるが、それは別にいい。 とにかく、吸血鬼や波紋のことを何も知らない軟弱者にバカにされるわけにはいかないのだ。 「俺は波紋だけを嘗めてるわけじゃないぜ。『てめえ』を俺は嘗めてるんだよ。おまえなんて大した事無い奴だ。 俺達に出会わなかったら速攻で死んでるに決まってるッ!」 「よくも、よくも言ってくれたな億泰……。」 億泰に向けて歩を進める。私の必殺技の間合いまであと少し。 「やめろダイアー」 アヴドゥルが私の前に立ちはだかる。億泰も憎いがこいつもまた憎い。こいつも億泰と同じように私と波紋を馬鹿にしているのだろう。 私への接し方でわかる。 「億泰と少し話がしたい。おまえがいると億泰が冷静でいられないからな」 ……話だと。何を相談するというのだ。私を追い払う算段か?二人でぶん殴るための話し合いか? 悲観的な考えが浮かぶが、事実、私が億泰と絡むと何の話も進まない。私は素直に、彼らに背を向け地面に腰を下ろした。 「……私は言っていないぞ。アヴドゥル」 「そうであることを願っている」 * * * 「あいつは絶対に言ったぜ。ぶん殴ってやろうぜ。アヴドゥル」 「おまえはすぐに『ぶん殴る』だな」 ダイアーから少し離れた場所で私と億泰の話し合いが始まった。 私としては、できるだけ争い事は避けたい。 億泰が言うように、ダイアーがジョースターさんのことを馬鹿にしたのであれば、やはりそれは、私にとっても、億泰にとっても、許しがたい行いだ。 しかし、だからといってダイアーと殺し合いを始めるわけにはいかない。スタンドは持っていなくともダイアーは一応仲間だ。 こんな状況だ。仲間は一人でも多い方がいい。それに殺し合いをするという事はゲームに乗るという事だからな。 あの巨悪、荒木の思惑通りだ。ゲームに乗るくらいなら死んだほうがましだと私は考えている。 私の考え方を、この少年は理解してくれるだろうか……。 「億泰、少し考えてくれ。ここで彼と争ってどうする。血が流れるだけだ。荒木の思う壷だぞ」 億泰は不機嫌そうに私の言葉に反応する。 「あんたは悲しくねえのかよ。ジョースターさんが死んじまったんだぜ。 俺の友達……ほとんど話しかけられたことなかったけど由花子って女もだ。俺は二人のこと考えると……なんつーかイラついて来るんだよ 絶対にあの野郎を許せねー程になァァァァ!」 億泰の叫びが杜王町にこだまする。ダイアーにも届いたはずだ。 この少年の気持ちは痛い程よくわかる。私だって悲しい、悔しい。しかし、その気持ちをダイアーにぶつけるのは駄目だ。 それはただの八つ当たり以外の何物でもない。 「おまえの気持ちはよくわかる。私だって悲しい。ダイアーが本当にジョースターさんを馬鹿にしたのであれば、私だって許せない。 しかし今は状況が違う。真に憎むべき相手は荒木だろう?私達はダイアーに対する怒りを抑えなければならない」 億泰が沈黙する。億泰はかなりイラついている。表情、目などから彼のイラつきを充分に察する事ができる。 私はこの時ある疑問を感じた。それは、ジョースターさんはこの億泰という少年といったいいつ、どこで出会い、親交を深めたのだろうということだ。 ジョースターさんはなぜ日本の不良にこれほどまでに思われているのだろうか。 いや待てよ。億泰は承太郎を知っていると言った。億泰は承太郎と同級生?たしか億泰は『承太郎さん』と言っていたな。 ということは承太郎の舎弟といった所か?それとも後輩? 承太郎が海外からはるばるやって来た自分の祖父に、自分の舎弟である億泰を紹介。そんなことをあの承太郎がするだろうか……。 私が疑問について考えを巡らしていると、億泰が沈黙に耐えられなくなったのか、ゆっくりと話し始めた。疑問はとりあえず置いておこう。 「俺は頭悪いけどよ、あんたの言う『理屈』はわかるぜ。でももう無理だ。どうやっても、ダイアーを疑ってしまう。 アヴドゥル、悪いけどよ。俺は感情で動いてしまうタイプなんだ。 例えばよお、誰がどう考えても正しい道ってのがあるよなあ。俺もなるべくその道を行きたいんだ。だけど俺はよ、たまに道を間違えるんだ。 その場の気持ちとかに惑わされてな……だけど俺はそれでいいと思ってる。理屈よりも『感情』で動く。 それが俺だ……馬鹿にしても、構わないぜ」 言い終わると、億泰は私に背を向け歩き出した。 「どこへ行くッ!」 「もう話し合うことなんか何も無いぜ。 俺がいると駄目だ。もうダイアーといっしょに行動できない。あんたはダイアーと行動してくれ。俺は一人で行動する……。 お互い生きてたらまたどこかで会おうぜ」 ……これほどまでか。億泰、おまえにはこれ程の思いがあったのか。ジョースターさんとどんな関係だったのだろうか。 ダイアーは言い間違えただけかもしれないのに、憎むべき相手は荒木なのに。 それほどまでに、死んでしまったジョースターさんと由花子という女を大切に思っていたのか……。 私もどちらかといえば直情型の人間だ。 億泰から、ダイアーがジョースターさんを馬鹿にしたと聞いた時、私も一瞬、殴ってやりたいという衝動に囚われた。 私はあの時、億泰と同じように殴りかかろうとしたのだ。 しかし、私より先に億泰がダイアーに殴りかかったことによって、私にこのチームをまとめなければという責任感が生まれ、 その責任感が私の衝動を急激に萎えさせたのだ。 できれば億泰を引き止めたい。私の『心』がそう言っている。 しかし一方で、私の『頭』は、「場を乱すような奴とはいられない。このまま行かせてやれ」と言っている。 どちらが正しいのだ。私は億泰を引き止めたいのだ。しかし、彼とダイアーが協力できるはずがない。 三人のうち二人が常に小競り合いをしている。そんな状況でどうやって打倒荒木の仲間を集めることができる。 『心』と『頭』、どちらに従えばいいんだ。 脳裏にジョースターさんの姿が浮かぶ。ほんの少しの間であったが、共に行動した仲間……。 彼の仇を討ちたい。そう、何が何でも荒木を倒さなければならないのだ。 私は……億泰を引き止めなかった。『頭』の声に従ったのだ。億泰自身が言ったようにまたどこかで会えればいいのだが……。 「待てッ!億泰!どこへ行くッ!!」 私の背後でダイアーが叫んだ。しかし、億泰は何も言わずに、私とダイアーに背を向け歩き続ける。 「待てッ億泰ッ!止まれッ」 「無駄だ!ダイアーッ!億泰はおまえと行動したくないんだ。ほっといてやれッ!」 私は叫んだ。貴様のせいで億泰は行くというのに……。ダイアーに対して怒りすら湧く。私は『感情』を抑えなければならないのだが……。 「黙れアヴドゥルッ!私は億泰に謝りたいんだッ! 私はジョセフという男を知らないにも関わらず、私の知っているジョナサンと姓が同じという理由で『大した事は無い』と馬鹿にしてしまったッ! それを謝りたいんだッ!許してくれ億泰ッ、君が指摘したように私は確かに馬鹿にしたッ!本当にすまない! 戻ってきてくれッ!億泰ッ!そして私を罰するためにこの顔を殴ってくれッ!」 私は目の前の光景を疑う。スタンドを持たず、私達よりもはるかに弱いくせに、妙に偉そうなあのダイアーが謝った。自分の罪を認めて謝ったのだ。 億泰は歩みを止めた。振り返りツカツカとダイアーのもとへ歩いていく。その顔は怒りで震えていた。 「手加減はしねえ、絶対にッ!」 パァンという小気味良い音、ダイアーは地面に倒れた。痛そうに顔面を押さえている。 億泰は怒りと苛つきによって息を荒げている。私は恐る恐る億泰に尋ねてみた。 「ダイアーを許してやってくれないか?そして、また……私達と共に行動してくれ」 億泰はいまだ怒りに燃える目で私を見つめる。 「……正直、まだ苛ついてんだがよぉ。俺はダイアーを殴った。だから、この件は水に流しておくぜェ……。 まだ、奴は大嫌いだがな……大人に、なるぜ」 私は微笑み、億泰の肩を軽く叩いた。大丈夫だ。きっと何とかなる。 我々はきっと荒木を倒すことができる。私には妙な確信があった。 「大丈夫だ億泰。我々はきっと……ジョースターさん達の仇を討てる」 ダイアーがふらつきながらもゆっくりと立ち上がる。億泰が殴った痕はあざとなって残っている。 「アヴドゥル、君の番だ。君もジョセフと親しかったのだろう?」 私は拳を硬く硬く握り締め、ジョースターさんへの思いを拳に込め、ダイアーの頬を思い切り殴った。 * * * さっきの一連の出来事が終わった後、私達は再び打倒荒木の意志を持つ参加者を探すため、移動を開始した。 億泰とアヴドゥルに殴られた頬が痛む。いや、奴らに『取り入るため』にわざと『殴らせてやった』というべきか……。 全く、本当に思い切り殴りおって、痛いではないか。億泰はいまだに、『自分がただ聞き間違えただけ』という事に気づいていない。 きっと私が悪いと頭から決め付けているのだろう。アヴドゥルも同じ事、奴は常に私に向けて猜疑の眼差しを送っていた。 これは人権侵害だ。小学生でもわかるぞ。 私は億泰とアヴドゥルが話し合っている間、自分のデイパックの中身を確認していた。私の支給品はただの紙切れ。 アブドゥル達に出会わなければ、スタンドの存在を知らなければ、私はこの紙を『ただ』の紙と見なし捨ててしまっただろう。 しかし、私はスタンドの存在を知っていた。この紙にも何かあるんじゃないかと思ったのだ。 案の定、そうだった。紙を開くと中から出たのはビンに入った青酸カリ。私は少し迷った。アヴドゥル達を殺すか否か……。 結論を出すのにそれほど時間はかからなかった。奴らを殺す。 私には、知り合いはもうツェペリさんしかいない(ディオとか言う奴も知り合いと言えば知り合いなのだがな)。 それ以外は赤の他人。自分の命のためだ。ゲームに乗ろう。これが一つ目の理由。 二つ目の理由、奴らは、スタンド使いは自分のスタンドに絶対的自信を持っており、我らの波紋をまるでお遊戯かのように、嘗めている。 我らの波紋には歴史がある。スタンドごときに嘗められてたまるか。 ここまで馬鹿にされてきたんだ。ここまで嘗められてきたのだ。億康とアブドゥルが憎い。 奴らに、スタンド使い共に、波紋の恐ろしさを、このダイアーの恐ろしさを思い知らせてやる。 私の殺人計画はこうだ。まず、彼らに謝り、信用してもらう。続いて、何とか騙して青酸カリを飲ませる。苦しんでいるところを私の波紋パンチで止めを刺す。 私の必死の演技のかいあって億泰と仲直りすることができた。億泰はどうかしらないがアヴドゥルは私のことをけっこう信頼しているような気がする。 波紋よりスタンドの方が上だと、君たちは思っているのだろう? この私、ダイアーは大した事無い奴だ、ただのヘタレだと君たちは思っているのだろう? そうでないことを証明してやる。この私自身がッ! * * * なぜ億泰はこれほどジョースターさんの事を思っているのか。日本の不良と外国人の老人が、これほど親しくなるものだろうか。 億泰に聞けば一番早いのだが、残念ながら今はジョースターさんに関係する質問をできるような空気ではない。 そもそもジョースターさんが億泰と親しかったのであれば、彼をエジプトへの旅に同行させたはずだ。 億泰はスタンドを持っている。充分、戦力になるはずだ。 もし親しかったのであれば、イギーのような扱いにくい犬を助っ人として呼ぶのでなく億泰を助っ人として呼んだはずだ。 しかし、呼ばなかった。同行させなかった。(億泰が断っただけかもしれないが)私はジョースターさんから一度も億泰のことを聞いていない。 つまりどういうことか……。私はずっと考えやっと答えを見つけた。簡単な事だ。荒木の『記憶を操るスタンド』こいつがあれば簡単だ。 荒木は億泰にジョースターさんとの友情という記憶を植え付けたのだ。たったそれだけのことだ。 しかし、ここにある問題が発生する。さきほどの揉め事は億泰のジョースターさんへの思いがなければ絶対に起こりえない。 億泰のジョースターさんへの思いは荒木が植えつけた。つまりこう言えるのではないか? 『さっきの一連の揉め事は荒木が仕組んだもの』もしかすると、記憶を植えつけられたのは、億泰だけではないかもしれない。 ダイアーにも何かの記憶を植えつけたのかもしれない。もしかすると参加者全員に何かしらの記憶を植え付けたのかも……。 もし荒木が参加者全員に何かしらの記憶を植え付けたのであれば、こう言える。 『我々の全ての行動は荒木によって管理されている』 もしこれが本当なら想像以上に恐ろしい能力だ。しかし、穴はある。荒木の性格を理解していれば、次の展開がある程度読めてくるはずだ。 荒木は自分の好み通りにゲームを動かしたいはず。おそらく……もっと凄惨に、もっと残酷にしたいはず。自分に反抗する者など決して許しはしないはず。 『シナリオはゲームが始まる前から荒木に決められている』 しかし、これらがもし本当なら私がこの事に『気づけた』のはなぜだろうか?荒木が私に気づく『きっかけ』である記憶を仕込んだのだろうか。 何のために? ……なんだか頭が痛くなってきた。とにかく、私の推測が正しければ、荒木の好み通りに、ゲームはどうあっても凄惨に、残酷になってしまうだろう。 どんな些細な事にも注意しなければ……。 億泰とダイアーに記憶を操るスタンドのことを説明した時、二人が余りピンとしていなかったのは、 『きっかけ』の記憶が植えつけられていなかったためだろう。 推測が正しければ私しかゲームを止められる者はいないはずだ。 おそらく、『きっかけ』の記憶を仕込まれたのはこの私だけだろうからな。 荒木によって全参加者の希望である『記憶』を植えつけられたこの私しか荒木を止められない。 つまり、私こそが希望の光……と言う事なのか? 【F-6/一日目/朝】 【ジョジョ屈指の噛ませ犬夢のコラボ+1】 【モハメド・アヴドゥル】 [スタンド] 『魔術師の赤』 [状態] 健康 [装備] なし [道具] 支給品一式(ランダム支給品はもう確認したかも) [思考・状況] 1)チームをまとめつつ打倒主催の仲間を集める(とりあえず仗助) 2) 3)に気づいたのはおそらく自分だけなので自分しかゲームを止められないと考える 3)このゲームのシナリオは実はもう荒木によって決められているのでは? 4)荒木のスタンドによってこのゲームはどうしようと残酷なことになると予想。些細な事にも充分注意して行動する。 【備考】アヴドゥルは荒木の能力を記憶操作と勘違いしています。 【ダイアー】 [能力名] 波紋 [状態] 鉢植えが当たって頭にコブ、殴られたため頬が痛む(アザになっている) [装備] 青酸カリ [道具] 支給品一式 [思考・状況] 1)億泰とアヴドゥルとの信頼を築き、どうにかして青酸カリを飲ませ殺す(波紋でとどめをさしたい) 2)スタンドよりも波紋が上という事を証明するためゲームに乗る(殺すのはスタンド使い優先) 3)ツェペリさんに会った時はどうしよう 4)自分を嘗める者は許さん 【虹村億泰】 [スタンド] 『ザ・ハンド』 [状態] 左手欠損、ジョセフと由花子を失った悲しみ [装備] 閃光弾 [道具] 支給品一式 [思考・状況] 1)ダイアーに対しての怒りをできるだけ抑える 2)打倒主催の仲間を集める(とりあえず仗助) 3)波紋は大した事無いと思っている 4)聞き間違えたかも、という考えは全くない 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 36 共演 ダイアー 72 その者共、同様につき その① 36 共演 モハメド・アヴドゥル 72 その者共、同様につき その① 36 共演 虹村億泰 72 その者共、同様につき その①
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男達の使い魔 第八話 「うぉーーー!」 虎丸が雄たけびをあげながら馬を走らせる。 一部の塾生を除いて、一号生に乗馬経験者はいなかった。 ほとんどみな、この世界に来てはじめて馬に乗っているのだ。 そのような中で虎丸の上達具合は頭一つ抜けていた。 馬と気を合わすのが上手いのだ。 もともと誰とでもすぐに友人になれる男だったが、ハルケギニアに来てからさらにその才能が増した。 そんな虎丸だからこそ滅び行く国への使者にふさわしい。 少なくともJはそう考えている。 それに、 チラリとJは横を見る。桃は、いかにも仕方ないヤツ、という風をよそおっているが、 その目は温かく笑っていた。どうやら同じ気持ちのようだ。 さて、ルイズ達に追いつかないとな。 桃とJはさらに馬を飛ばすことにした。 虎丸もそれについてくる。 意外にも見事な乗馬術を披露するギーシュもまだまだ余裕だ。 シエスタにいたっては、時々馬の横を併走している。 どうやら大豪院流の鍛錬の一端らしい。 ルイズとワルドは、グリフォンに乗って先に行っているのだ。 少しはとばさないと追いつけなくなりそうだ。 そうして一同は、二日かかる道のりをわずか半日で駆け抜けた。 『金の酒樽亭』 港町ラ・ロシェールにある寂れた酒場だ。 この酒場には有名な看板がある。それには 『人を殴るときはせめて椅子をおつかいください』 と書いてある。 喧嘩が絶えないこの酒場で、せめて武器の使用を抑えさせたいという、店主の愛に満ちた看板だ。 そう、表向きはだ。真実を知るものはほとんどいないが。 キィ そんな酒場をくぐる男がいた。 長身で痩せ型。それだけならなめられそうな者だが、男は杖を手にしていた。 どうやらメイジのようだ。 さらに白い仮面にマント。異様な風体に思わず酒場の住人達は口を閉ざす。 そんな酒場の空気をいっさい気にすることなく男は歩いていく。 そうして、一人の男の前に立った。 その男もまた異様な男であった。 2メイル以上はある大柄な体格を、窮屈そうに虎の毛皮で飾っていた。 頭の髪の毛は、全て綺麗にそりあげてある。 何よりも、その眼が異常だった。 睨んだだけで気が弱い者なら死んでもおかしくないその目は、まさしく凶眼であった。 そんな男の前に立った仮面の男は、机の上にどさりと金貨の入った袋を投げおいた。 そして言った。貴様達を雇おう、と。 「ほう。貴族様が俺達のことを知って雇おうというのか。」 その言葉に仮面の男は薄く、そしてひどく酷薄に笑ってこういった。 「知っているさ。メイジをも上回るという傭兵集団、巌陀亜留武(がんだあるぶ)三十二天だろ。」 聞き届けた男は、素手の方が武器を持っているよりも凶悪な、三十二天の頂点に立つ男も酷薄な笑みを浮かべた。 その巧みな馬術によって、ルイズたち一行は、無事日が暮れる前に港町ラ・ロシェールにたどり着いた。 スクウェアクラスの地の魔法使いたちが競い合って作ったというその町は、まさしく芸術であった。 その町並みに思わず驚きの表情を浮かべる、桃たちにルイズとギーシュは誇らしげに解説している。 その後ろには、シエスタが密やかにたたずんでいた。 そうして騒いでいるところにワルドが戻ってきた。 無事宿を取ることができたらしい。一行は『女神の杵』亭に向かった。 「は~い!」 そこにはキュルケがいた。タバサも椅子に座って本を読んでいた。 その様子に思わずルイズは足を滑らせる。 なんでこんなところにいるのかと尋ねるルイズに、キュルケは悪びれる様子もなく返す。 朝こそこそと学院を出て行くルイズを見たキュルケは、タバサのシルフィードで追いかけたのだ。 面白そうなことを独り占めするなんてゆるせない、そう考えたキュルケは、 行き先をラ・ロシェールと勘で決め、ルイズの泊まりそうなホテルに先回りしていた。 貴族が泊まりそうなホテルなんて一軒しかなかったから楽だったわ、と帰すキュルケ。 まことに恐ろしきは、女の直感である。 そんなキュルケとルイズは言い争っている。 いつもの光景に、思わず桃たちはほほが緩むのを感じた。 そんな中でシエスタとワルドが睨みあっていた。 どちらがルイズと一緒の部屋になるかを競っている。 ついにワルドが折れたようだ。虎丸と相部屋になることになったようだ。 あの男達と私を一緒の部屋にするおつもりですか、というのが決め台詞だったようだ。 本心ではぜんぜん危険を感じてなどいないはずなのに、平気でそういうことを言うシエスタに、 虎丸はひそかに戦慄を感じていた。 そうして一日目の夜がふけていった。 二日目の朝がやってきた。 みな疲れも取れたようでさっぱりとした表情をしている中、ワルドだけがなぜか疲労していた。 「そんな顔してどうしたんだ?」 同室だった虎丸が不思議そうな顔をして聞く。そこにワルドが恨めしそうな視線を向ける。 どうやら虎丸の鼾と歯軋りで眠れなかったようだ。 同じ経験をしたことのある桃とJは憐憫の視線をワルドに向ける。 どうやら二人は結託して虎丸との相部屋を避けていたようだ。 そんなワルドであるが、口には出さないあたりは、さすがグリフォン隊隊長といったところか。 そうしてワルドは、もう少し休んでいくと言うと、部屋に戻っていった。 そんなワルドを見送ったルイズたちは、町へと繰り出すことした。 なんだかんだで、見知らぬ土地は、旅心を刺激するのだ。 初めて見るハルケギニアの町は、印象的だった。桃たちは、今まで学院から出たことがなかったのだ。 そんな光景に浮かれた虎丸とギーシュは、出店を冷やかしては店主と話し込んでいる。 Jは一人壁に寄りかかって景色を眺めていた。 キュルケとタバサは、かつての決闘場を見学に行っていた。何でも「殺シアム」というらしい。 そんな中、桃とルイズは、通りに面した店で飲み物を飲んでいた。 ふと桃が話を切り出した。一度デルフリンガーをじっくりと見たい、と。 いつも剣を背負っていることから、桃を剣士あろうと考えていたルイズはOKを出した。 その代わりあんたの腕前を見せなさい、という交換条件を出して。 桃がゆっくりとデルフリンガーを引き抜く。 「おでれーた。兄ちゃん相当の腕だな!兄ちゃんほどの腕なら喜んで使われてやるぜ! ん?しかしなんか変な感じだなー。使い手のようで使い手でないような……。」 デルフリンガーの台詞にルイズが突っ込む。 「使い手って?」 「忘れた!」 即答するデルフリンガーに、使えないわねぇとつぶやいたルイズは、桃に期待するような視線を向けた。 あたりを見回した桃は、適当な大きさの岩を見つけた。 ついて来い、そうルイズに行った桃は、岩の前に立って静かに大上段にデルフリンガーを構えた。 デルフリンガーは何も言わない。 その姿に思わずルイズは息をのむ。構えたまま微動だにしない桃には一種の威厳があったのだ。 閃 次の瞬間には真っ二つに切り裂かれた岩だけが残っていた。 風のメイジでもここまで簡単には切り裂けないだろうに。ルイズの感想である。 感嘆したルイズは、桃にしばらくデルフリンガーを預けることにした。 デルフリンガーも驚いていた。使い手以外で、これ程の腕前を持っている男はいなかったのだ。 そうして夜になった。 いよいよ明日はアルビオンだ。 酒場では、虎丸とギーシュが騒いでいる。キュルケやタバサも楽しんでいるようだ。 その風景を桃とJが楽しそうに見つめていた。 ルイズは二階でワルドと少し話している。 昔を掘り返そうとするワルドと、アンの親友としてあることを誓ったルイズでは話がかみ合わないようだ。 その時、酒場に男達がなだれ込み襲い掛かってきた。 反射的に、虎丸がどう少なく見積もっても200キロは下らないだろうテーブルをひっくり返して盾にする。 その音がゴングになった。 巨大なテーブルをいとも簡単にひっくり返した男に、傭兵達に戦慄がはしる。 とても人間の力とは思えないのだ。 しかし、自分たちとてプロである。矢を射掛けるのをやめると接近戦を仕掛けるべく突撃を開始した。 虎丸がテーブルを盾にするのとほぼ同時に、全員が合流した。 裏口まで完全に囲まれたことをワルドが知らせる。 そうして言った。血路を切り開く必要がある、と。 その言葉にJが答える。 「俺がやろう。全員合図とともに一斉に飛び出せ!」 「あら。あたしも参加させてもらうわよ。」 キュルケが不敵に笑って付け加えて化粧を始める。 いわく、この炎の舞台で主演女優がすっぴんじゃあしまらないじゃない。 タバサも、いつの間にか手に杖を持っている。どうやら残るつもりのようだ。 その風景にルイズは、思わず目に熱いものを感じた。 作戦は決まった。 傭兵達がテーブルの盾に近づいた瞬間、真っ二つにテーブルが切り裂かれる。 桃の抜刀術である。 その速度に、一瞬ワルドの眼が細まるが、気づいたものはいなかった。 「スパイラル・ハリケーン・パンチ!」 渾身の気合とともにJが拳を繰り出すと、巨大な竜巻が発生した。 タバサがそれに氷の呪文を合わせる。 氷の槍と竜巻で、傭兵達が蹴散らされる中、六人は竜巻の中心を駆け抜けた。 裏口の敵を倒してくる、そう告げたタバサを見送ったキュルケは、ようやく化粧の終わった顔を上げる。 「さて。後はあいつらを片付けるだけね。」 「ぐわはははは!やりおるわ。」 巌陀亜留武三十二天の将、棒陀亜留武(ぼうだあるぶ)百五十二世はそういて笑った。 「貴様らはわしら巌陀亜留武三十二天が直々に相手をしてくれるわ!全員下がれ!」 そうして舞台は決闘の様子をていしてきた。 二対三十二の不平等な決闘を。 Jが前に進みでようとするのをキュルケが止める。 「知らなかったミスタ?ヒーローは最後に登場するものよ。」 そう嫣然と笑って、キュルケが前に進み出る。 その様子に傭兵達が歓声をあげる。キュルケの姿に下卑た想像をしているのだろう。 まったく気にすることなくキュルケが声をあげる。 「さて、紳士の皆様!おあついのはお・好・き?」 一人目は足を燃やされた。二人目は足は庇ったが顔を燃やされた。 三人目は体を燃やされた。全身を盾に身を包んだ四人目はその自慢の盾ごと燃やされた。 ことここにいたって、相手がただのメイジではないことを悟った巌陀亜留武三十二天達の顔色が変わる。 いかに巌陀亜留武三十二天の中ではヒヨッコ同然の者達とはいえ、四人も倒されたのだ。 しかし、と棒陀亜留武は思う。これでメイジの手の内は見た!と。 そうして煙草を吸う振りをして、男達に目配せをする。一人の男が矢を放った。 完全に決闘と思い込んでいたキュルケにそれを避ける余裕はない。 ズドン! 矢が刺さる音がした。 その音に思わずキュルケは振り返る。Jの胸に矢が刺さっていた。 卑劣な相手への怒りがキュルケの胸を焼く。 そうして全員を燃やし尽くそうとしたキュルケをJが止めた。 胸筋は人間の体の中でもっとも瞬発力がある。ゆえに大丈夫だ。 そしてあいつらは俺がやる、と。その目に、主演女優は主演男優に場を譲ることにした。 メイジをやり損ねた棒陀亜留武は、不機嫌そうに鼻を鳴らす。 しかし、この人数ならば、いかに凄腕の炎のメイジとて造作もないだろう。 そう思い直した棒陀亜留武は、手下達に指示を出した。 連携戦闘に長けた五人が襲い掛かった。 Jの顔は怒りに燃えていた。 しかし、それを声に出すことはしない。ただ、行動で示すことにした。 襲い掛かろうとした五人が急に立ち止まる。 その光景に不審を感じた周りが囃し立てる。 (今のがわからないなんて、長生きできそうにない男達ね。) そうキュルケは心の中で呟いたとき、五人の鎧が砕け散り、地面に倒れふした。 周りが雑然となる中、残りの三十二天は戦慄を覚えていた。 Jのマッハパンチが炸裂したのだ。 「面倒だ。全員まとめてかかって来い!」 その台詞に、棒陀亜留武を除く三十二天全員が構え、副将各らしき男が応える。 「まさか、本当にわしら全員でかからねばならんとはな! 数多くのメイジ達をも瞬殺してきた巌陀亜留武三十二天集団奥義を見るがいい!」 「「「奥義!巌陀亜留武三十二天凶天動地!!」」」 そういって上から下から前後左右から男達が襲い掛かる。 天地を押さえ、四方を押さえた男達の攻撃に死角はない! たとえメイジといえども、これだけの同時攻撃を避けられる道理はないのだ! しかし、無理を押し通せば道理が引っ込む。 Jは己の拳を構えると、絶対の自信を持つ必殺ブローを放った。 「フラッシュ・ピストン・マッハ・パンチ!」 音速という名にふさわしい拳の連打が終わったとき、そこに立っているものはなかった。 「次はお前の番だ。」 棒陀亜留武の顔が凍りついた。 そういって棒陀亜留武へと歩き出したJの体がぐらりと揺れる。 その様子に、ようやく棒陀亜留武の顔に色が戻る。 「ふはははは!先ほど貴様が受けた矢には毒が盛ってあったのだ。 しかし、竜であろうとも10秒で倒れるほどの毒を受けてここまでもつとはな。 正直驚いたぞ!」 そう言って、棒陀亜留武がゆっくりとJに歩み寄ると蹴りを加えた。 その様子にキュルケと、いつの間にか戻ってきたタバサは唇をかみ締める。 しかし、手は出さない。Jの眼が言っているのだ。まだ自分は終わっていないと。 動かない体に次々と攻撃が加えられる。Jはなんとか動く口を動かした。 「この下種野郎が!」 「うわはははは!この世は勝てばよいのだ! お前が死んだ後も、あのお嬢ちゃん達は俺達で面倒を見てやるから安心して死ぬがいい!!」 そう言って、下卑た表情を浮かべる男にJの血が煮え滾る。 なおも男は攻撃を加え続ける。 骨が折れた!それがどうした。 体が動かない!それがどうした。 Jは問答を続ける。怒りが彼の体から命が消えるのをゆるさない。 彼の両眼からは、怒りのあまり血の涙が滴っている。 そして…… 「充填完了だ!」 そう言ってJは男を跳ね除けた。 「まだそれほどの力があるとは見上げたヤツよのう。 最後に言い残すことがあれば聞いておこうか。」 「フィスト・オブ・フュアリー。これが貴様を地獄に送る拳の名だ。」 そう返すJに男は不快感を感じた。 そうして止めを刺すべく男は奥義を繰り出した。 「食らえ!巌陀亜留武三十二天秘奥義!」 しかし、それよりも早く 「マッハ・パンチ!」 Jの拳が男に突き刺さっていた。 男は大きく弧を描いて空を飛んでいた。 Jはゆっくりと崩れ落ちた。全てが限界だったのだ。 そこにキュルケとタバサが駆け寄ってくる。 それを視界におさめつつ、Jの意識は暗転した。 そのころ桃は苦戦を強いられていた。 無事敵陣を突破した桃達に、白い仮面の男が襲い掛かってきたのだ。 それを食い止めるべく、桃が躍り出たのだ。 白い仮面の男は恐るべき使い手であった。 桃は思う。このデルフリンガーがなければ、自分は初手で敗れていただろうと。 じりじりと時間がたつ。 初撃のライトニングクラウドをデルフリンガーで吸収することに成功した桃であるが、 以降はこうして対峙したまま膠着していたのだ。 下手に踏み込めば、あの閃光の餌食になってしまうだろう。 しかし、 (相手が間合いを取ろうとしたところを逆にしとめる!) 桃には勝算があったのだ。 そうして時間が経過する。 ふとキュルケの声が聞こえた。向こうを片付けたようだ。 その声に仮面の男の気配がゆれる。 好機! そう判断した桃は、ついに男を一刀両断した。 二つに分かれた男が風となって消えいく光景に、桃は戦慄を覚えた。 あの男は実体ではなかったのだ。 まさか!桃の脳裏に根拠のない考えが浮かぶ。 キュルケ達が追いついた後も、桃はじっと空の方を見上げていた。 それはアルビオンの方であった。 男達の使い魔 第八話 完 NGシーン 雷電「あ、あやつらはまさか!」 虎丸「知っているのか雷電!」 雷電「うむ。あいつらこそまさしく、古代中国において恐れられた暗殺拳の使い手である巌陀亜留武三十二天!」 巌陀亜留武三十二天、ハルケギニアにおいて有名な傭兵集団であるが、その出自を知るものは少ない。 もともと彼らは、古代中国で迫害されていた暗殺拳の使い手であったのだ。 そのあまりの腕前に恐れを抱いた煬帝が、王虎寺に命じて征伐させたのはあまりにも有名な話である。 しかし、実は彼らは滅んではいなかったのだ。 間一髪表れた不思議な光に吸い込まれた三十二人は、不思議な人物に命を救われた。 彼こそ、後の始祖ブリミルの使い魔、ガンダールヴである。 命を救われた三十二人は、ガンダールヴにその命の借りを返そうと、数多くの戦いを共に闘ったという。 しかし、運命は無情にも、彼らよりもガンダールヴを先に死なせてしまった。 死因はわからない。ただ、そういう事実だけは伝わっている。 恩人に先を越された彼ら達は、それでも借りを返すべく闘い続けた。 そんな彼らを、民衆たちは敬意を込めて巌陀亜留武三十二天と読んだという。 なお、最近巷をにぎわしている傭兵集団にそう名乗る者達がいるが、 その因果関係はまったくもって不明である。 民明書房刊 「港町羅炉死獲流(ら・ろしえる)」(平賀才人著)
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【ミリマスSS】このみ「ん…あんっ…」P「ここがいいんですか?」 執筆開始日時 2014/08/09 元スレURL http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407521994/ 概要 このみ「そこっ…いい…もっとして…んっ」 P「どうですかこのみさん。気持ちいいでしょう?」 このみ「うん…こんなの初めて…っ」 小鳥(ピ、ピヨおおおおおお!?) タグ ^音無小鳥 ^馬場このみ ^百瀬莉緒 まとめサイト えすえす えすえすMode エレファント速報 ひとよにちゃんねる ポチッとSS!! SSまとめ SSウィーバー SSちゃんねる SSびより SSマンション SS 森きのこ!
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その日、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーは娯楽に飢えていた。 タバサと二人で暇をつぶしていた彼女は、騒ぎを聞きつけると、タバサを伴い真っ先に駆けつけた。 騒ぎを見物するなら、特上席で。 そう考えた彼女は、シルフィードに乗せてもらうことにしたのだ。 タバサはお気に入りの本を読んでいた。 タイトルは 太公望書房刊「今日からあなたも漢方マスター!」(観余頭尼屠尼瑠无(ミョズニトニルン))著 である。 タバサ本来の目的の役にこそ立たなかったものの、素晴らしく実用的な本であるのは間違いなかった。 惜しむらくは、この本が数千年前に書かれたものであり、著者その人に会って話を聞けないことくらいだ。 他の誰でもない、自分の親友のキュルケの頼みだからこそ腰を上げたのだ。 そして彼女達は聞いた。そして見た。 天をも揺るがすようなエールを。 そして、素手でありながら、ついにはメイジをも倒してしまった少女の姿を。 最後の瞬間二人は思わず目を見張った。 メイドの少女が、実際の何倍にも大きく見えたのだ。 そして…… シエスタが目覚めたとき、見知らぬ天井と、心配そうにこちらを見つめている多くの視線があった。 (あれ?ここは?) 確か自分がギーシュという貴族に勝利して、歓声を受けたところまではおぼえている。 しかし、その後の記憶がない。 そこで、シエスタは近くにいた無精ひげを生やした男に声をかけることにした。 その男は、確か自分を応援してくれた男の一人であることにシエスタは気づいていた。 「あの、すいません……」 その声に気がついた男は、慌てて大きな声をあげた。 「おーい!お嬢さんが起きたぞ!!」 その声と共にルイズが、そして応援してくれていた男達が一斉にこちらを振り向いた。 無事に起き上がった姿を見たルイズは、何か言おうとして、そして言葉をなくした。 彼女が背負って闘ったものには、ルイズの名誉も含まれているのだ。 今は、照れ隠しに怒鳴る時ではない。 貴族として、感謝をする時だ。 だからルイズは行動にでることにした。 ただ、黙ってシエスタを引き寄せて、ありがとう、とささやいた。 そうして少し間時間がとまる。 男達も何も口を出さない。 今、主役はこの二人であると分かっているのだ。 その行動に呆然としていたシエスタではあるが、当初の目的を思い出した。 そこで、どうして自分がここにいるのか、そして大怪我をしていたはずなのにどうして治っているのかを尋ねることにした。 そうして、彼女達の会話が一段落したところで、今度は男たちも会話に加わることにした。 彼らのうち大半は普段女性と接触する機会がまったくなく、扱いに慣れていない。 そのため、あらかじめ飛燕が質問係として選ばれていた。 男塾一号生の中で、もっとも女性受けしそう、という理由だけでだが。 「シエスタさんでしたね。私は飛燕といいます。はじめまして。 そこにいるヴァリエール嬢の使い魔として働いているうちの一人です。」 などと、和やかに自己紹介を行った後、男達の一人一人を簡単に紹介した。 そうしていよいよ話は本題に入る。 「シエスタさん。あなたの祖父は、もしかして、大豪院邪鬼と名乗っておられませんでしたか。」 どうして祖父の名前を知っているのですか、と逆に聞き返したシエスタは気がついた。 男達がみな涙を流していることに。 不思議とその涙は美しかった。 その後、彼らは夜遅くまで話し込んだ。 彼らが祖父の後輩であると聞いた彼女は驚いた。 ただ、話しているうちに、彼らの纏う空気が祖父のそれに似ていることに気がついたシエスタは納得した。 年代が違う、世界が違う、そういった違いを跳ね除けて納得したのだ。 いつしかルイズも加わり、話は進んでいった。 彼らは、この世界に来てからの祖父の話に、時には涙を流し、時には大笑した。 一方、ルイズとシエスタもまた、彼らの破天荒な日常や戦いを楽しんだ。 そして夜がふけていった。 同じ夜、キュルケは自室のベッドで静かに横になっていた。 普段の彼女ならば、今頃恋人の一人でも自室に招いて、微熱に身を焦がしていただろう。 しかし、ここ数日はそういう気分にはなれなかった。 ギーシュと決闘したときのシエスタの姿と、まさしく全身全霊をかけて声援を送るルイズの使い魔たちの 姿が頭の中にこびりついて離れないのだ。 あれ程までに誰かを思いをぶつけることができるのだろうか。 キュルケの悩みはそこにある。 自分が今までしてきた恋に悔いはない。 全て、自分をいい女にするために必要なことであったからだ。 ただ少しだけ寂しいのだ。 (まあ、恋人ではないけどタバサがいるからいいか。) そう結論付けた彼女は、今日はタバサのところで女同士の会話でもしよう、と考えて立ち上がった。 タバサの興味は、実務的なところにあった。 具体的にはシエスタの使った真空殲風衝だ。 あの時、彼女からは魔法の力をまったく感じなかった。 (人は鍛えればあそこまでできる。) その現実に、タバサは希望を持った。 自分もあそこまでできれば、母を治す薬を取り返すことができるかもしれない。 普段のタバサなら考えないような過激な考えではある。 そう本人も自覚はしているが、止めるつもりはない。 少なくとも、希望は見えたのだから。 そこまで考えが及んだとき、部屋のドアから声が聞こえた。 キュルケだ。 そうして夜はゆっくりとふけていった。 男達の使い魔 第3.5話 完
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「タイトル」 「タイトル」 [#xa843889] シナリオ開始前選択 [#wff1b3da] 勝利条件 [#acc89341] 敗北条件 [#a52592e8] ステージデータ [#jd9afcd4] 敵データ [#qff12698] 撤退情報 [#wa53839c] 攻略アドバイス [#r1daeb99] イベント [#nd734466] 戦闘会話 [#td0da443] シナリオ終了後選択 [#t35ba307] 前シナリオ [#y61dc847] 次シナリオ [#s7d4a29e] シナリオ開始前選択 勝利条件 敵の全滅 敗北条件 味方の全滅 ステージデータ 初期 機体 操者 備考 初期味方 ヴァルシオーネR リューネ ガッデス テュッティ ザイン シモーヌ ディアブロ プレシア ノルス・レイ セニア デルギラン メフィル ラ・ウェンター ベッキー 初期敵 バゾーダン極x2 ベンディット極x5 グラフドローン極x6 初期NPC (増援出現条件) 機体 操者 備考 味方増援 敵増援 敵データ 初期 機体名 操者 LV 精霊 HP 射程(P) 獲得資金 備考 - - - () - 増援 機体名 操者 LV 精霊 HP 射程(P) 獲得資金 備考 - - - () - 撤退情報 攻略アドバイス 女性陣の平均Lvが男性陣のものより高いとこちらのシナリオになる シナリオに関わるメインキャラは女性が多く、それらを優先して使っている場合はこちらのシナリオになりやすい。 女性陣が煩悩まみれの男共を相手にするネタ的シナリオ。 イベント メンバーそれぞれのファンを相手にすると会話がある。下記画像参照。 戦闘会話 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (www.dotup.org2529772.jpg) ミオVS手下いずれか一人 ミオVSエリック テュッティVSズネロ テュッティVSエリック シナリオ終了後選択 前シナリオ 「タイトル」? 次シナリオ 「タイトル」?
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【妄想属性】妄想 【作品名】10頭の豚野郎ども 【名前】10人の体重100kgを越える男達 【属性】10人の体重100kgを越える男達 【大きさ】【攻撃力】【防御力】【素早さ】10人の体重100kgを越える男達並み 【長所】数 【短所】豚 ◆考察記録--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 795 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2010/05/16(日) 10 31 02 ID Yd9TsnAZ 10人の体重100kgを越える男達を考察してみる 9人の中年男性+年齢不詳の人間の渦ネ申祐犬とほとんど変わらないのでそこから △渦ネ申祐犬 互角だろう ×花子太郎 速い ×キリン 普通のキリンでやっと勝ち目があるくらいだろうから無理 ×ジーコジャパン 量でも質でも劣る ジーコジャパンの下位互換なのでこれ以上は無理 一応渦ネ申祐犬の下も考察する ○リムスター リンチすれば勝てるか ○テンプレでないもの 数で制圧 ×ゼヴェルギーン 無理 ○霧 ラグが大きいので勝てる ○隼(鳥類図鑑) 数で制圧 ○ぐんじんさん 数で制圧 渦ネ申祐犬=10人の体重100kgを越える男達 796 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2010/05/16(日) 11 39 45 ID 7WPos/DO 互角か? 797 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2010/05/16(日) 14 53 09 ID GdvmF3Us 年齢がわからないからなんとも言えんな
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「「まず最初に男の子達にコスプレをしてもらおうと思います!!」」 「「「「「ちょっと待てい!!」」」」」 「なンで俺達がコスプレなンぞしなくちゃなンねェンだよォ!!」 「そうだそうだ!!俺達は招待客だぞ!!」 「にゃー!!断固拒否だぜい!!」 「ボクはもうこりごりや!!」 「それにお姫サマも見てるんでせうよ!?」 しかし母親達はそんなものには動じない。 「はいはーい!!カップルの女の子達ー!!この男共のコスプレ姿見たいかー!!」 「「「「「見たい!!」」」」」 「「「「「うおい!!」」」」」 「男達に恥ずかしい言葉を言わせたいかしらー?」 「「「「「言わせたい!!」」」」」 「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!!」」」」」 「「それじゃあけってー☆」」 「「「「「うっぎゃああああああああああああああああああああああああ!!」」」」」 パーティーが始まると言う事で帰ってきた五人、そして野郎共のコスプレが始まる。 「なンで俺からなンだよォ!!」 「あなたってば往生際わるーい!!ってミサカはミサカはからかってみたり!!」 カチン!!「ったくよォ!!さっさとだせェ!!」 「はいはいはい、落ち着いて落ち着いて、衣装はお風呂場にあるわよ~。」 「分かったよォ」 数分後… 「やけに遅いな…」 「どんだけ恥ずかしいのよ。」 「早く見たーい!!ってミサカはミサカははしゃいでみたり!!」 「…着てきたぞ…」 そこには… 「何でこんな格好しねェといけねェンだよォ…」 「まっ、まさかのカナミン!!??ってミサカはミサカは戦慄してみたり!!!!!!」 「ぢくしょォ……俺の人生最悪の日だァ…」 今日という日は「学園都市最強がマジで泣きそうになった日」として記念に残るだろう。 だが。鬼母はさらりと言った。 「まあ一方通行君のはいい方ね。さあさあどんどん行くわよーっ♪」 「「「「ひぃいいいいい!!!!!」」」」 「ちょっと待て!!良い方ってどういう意味だ!?」 「あらあら、当麻さんたら往生際が悪い。」 「いやだって一方通行君にこれ以上させたら新居が吹き飛びかねないじゃん。」 「確かに。」 「ってナニ美琴さんは納得しちゃってお風呂場に押し込もうとしてますか!!??」 「まあまあ良いからいいから♪」 「やけに楽しそうだなオイ!!!」 そんなこんなで風呂場に押し込まれた上条さん。 残る男3人は脱出を図るも… 「行かせないよ♪」 「外へ出るなら着替えてからですの♪」 「はまづらのコスプレも面白そうだし。」 阻まれた。 そして一方通行の時よりも時間が経ってから上条さんは出てきた…… 「はっはっは…何でせうかこれー!!」 上条の格好は… ボクサーだった。 「ねえ!!ボクサーってコスプレでせうか!!それに右グローブが無いし!!」 「いや、だってそれだと必殺の幻想殺しが使えないのよね。」 「あ、なるほど、そういうことか…って俺だけパンツ一丁だろうが!!」 そんな上条をみて親達&魔術師達&そのたもろもろが笑っている。 しかも満面の笑みで… 「くっそー!!不幸だーーーーーーーーーー!!」 「でも結構似合ってるわよ。」 「そうか?ならいっか!!」 「当麻ったらカッコよすぎ♪」 チュッ、レロレロレロ… さすがの魔術師達もここまでくると呆れてくる。 しかしに次出てきたコスプレは良くなかった…。 上条は夏休みの海の悪夢をまた一度見ることになった…。 「あの時の青髪ピアスが浜面に変わっただけでもきっついものはきっついな…………」 (マシだァ、あいつのコスプレに比べたらカナミンが正装にすら思えるぜ……) 浜面のコスプレ、それは偶然にも『御使墜し』で青ピ(魂はインデックス)が着ていた水着だった。 これには追いかけっこから帰って来た面々も含めて絶句していた。 (……死にてぇ) 浜面はあまりの恥ずかしさに自分でも気付かずに涙を流していた。 あまりの浜面の様子に発案者の絹旗でさえ、 (超やりすぎたようです……。浜面を超可哀想だと思ったのは初めてですね) 今の浜面には反省、そして同情を禁じ得なかった。 そんな沈黙の中、滝壺がゆっくりと近づき、頭を撫でた。 「がんばったねはまづら」 「た、滝壺おおおおおおおおおおおおおっ!」 滝壺の優しさにパーティー会場にいた全ての人間が感動の涙を流していた。 泣き終わった浜面だが、吹っ切れたのか着替えることは無く、他の面々も黙認していた。 次は神裂がプレゼンした土御門の番である。 (あの感動の後ってのは出にくいな……。しかし自分でこれを着ることになるとは夢にも思わなかった。ま、浜面よりはマシか) しかし土御門は知らない、一人の少女が覚醒してしまうことに。 土御門の格好は堕天使エロメイド半ズボンバージョンである。 はっきり言っておく、これは神裂の復讐である。 土御門が出ていくと。 ザザザッ!!!! すべての人間が、いや空気さえも退いて行った。 「にゃー」涙が出てくるのを止められない。 その時。 ヒューッと冷たい風、北風の様なものが吹いた。 全員が風上を見ると。 「土御門君、そーゆー趣向はもうやめるって昨日の夜誓ったよね。」 「にゃーっ!!もちろんですたい!!!これは無理やりでしてっ!!!」 土御門の言い分ももっともである。 だが堕天使エロメイドの破壊力は月夜の事実認識を誤らせるには十分すぎるものであった。 「問答無用。ああ上条君、君の新居壊さないように善処するから♪」 「「その心は?」」 上条と土御門が尋ねる。 「つい最近出来るようになったので殺ってみる♪『局所瞬間凍結能力』って言うらしいんだ。」 「そっ、それはっ!!たしかレベル4以上の凍結系能力者しか使えない技ですのっ!!」 「にゃーっ!?月夜いつの間に!!??」 「知るかそんな事ーっ!!!」 カチン! 本当に局所であった、瞬間であった。 「す、すごい…。」 「か、感心してる場合やあらへんで!!土御門はん昨日に続けて凍ってしもた!!」 「あちゃーしまったわね。」「あらあら、美鈴さん的には後悔してる??」 「ぜーんぜん」「ですよねー。」 「土御門には日頃のお返しでこれくらいいいかと思ってたのですが・・・。」 「プリエステス、土御門の彼女を考慮しなかったのは失敗なのよな。」 「ですね。」 その後はもちろん・・・・ 「ちょっとお待ちくださいな、」 「なによ、黒子?」 「いえいえ、空気に溶け込んで逃げようとしている○○様のコスプレがまだですの」 「「「「「「「「「「「「あっ…」」」」」」」」」」」」 すっかり忘れていた。 「黒子はん!?何余計な事をいうてはるの!?」 「私はただ純粋に、○○様の、あんな姿やこんな姿…ましてやそんな姿まで!!」 それは純粋と言えるのだろうか? 「黒子はんの期待に応えられるか分からんけど、ボクのは正直当たりやね♪ こない素敵なコスプレ出来るとは思わんかったわ」 そう言ってテンションやや高めで現れた青ピに常識人たちは凍りつき、女王陛下&三人のお姫様&騎士団長&最大主教は感心していた。 青ピのコスプレは顔を覆うほどの蝶々の仮面、胸元から股間辺りまで開かれ、股間に蝶々のエンブレムがあしらわれたスーツ、いわゆる蝶人スタイルだ。 「「嫌ーーーーーーっ!(ってミサカはミサカは目の前の化け物に攻撃してみたり!)」」 「うわっと! 危ねぇだろ二人とも! つーか青髪! てめえはそんな格好してて恥ずかしくねえのかよ!」 変態蝶人に生まれ変わった青ピを葬ろうとした美琴と打ち止めの電撃を打ち消しつつも、当麻は青ピに怒鳴りつける。 しかし相手は学園都市、いや世界一の包容力を持つ男だということを当麻はすっかり忘れていた。 「何ゆうてんねんカミやん。こないな蝶エレガントなスーツ、着せてもらえるだけありがたいと思わんと。黒子はんもそう思うやろ?」 「……様蝶サイコー、グヘへヘヘヘヘへへ……。ほとばしりますの、わたくしの燃え滾るアツ~イパトスが……!」 「く、黒子? ○○さんがさっきから呼んでヒッ!」 美琴が驚くのも無理からぬことで、今の黒子は目は爛々と輝き、口からは大量の涎、鼻からは若干量の鼻血が出ていたのだから。 そして飢えた肉食獣のように黒子が青ピへと襲い掛かる! 「もう辛抱たまりまっせんの! ○○様、今から隅から隅までたーーーっぷりといただきますのーーっ!」 「ちょ、ちょい待ちいや! こない人前でそないなことしたらアカンで!」 「なーーーんにも聞こえませんのーーーーっ! 黒子は今日を以って大人にあだだだだだっ!」 青ピを救ったのは初春にあらかじめ指示を受けていた神裂のワイヤーによる拘束だった。 ぐるぐる巻きにされてもなお暴れる黒子に初春が近づき、何事かを囁くことでようやく大人しくなった。 「いやー助かったで初春はん。せやけど一体何を黒子はんに吹き込んだん?」 「いいえー大したことじゃありませんよ。パーティーが終わって二人っきりになったら思う存分すればいいとだけ」 「それってボクの危機が先延ばしになっただけやん!」 神裂から解放された黒子はなおもうっとりと青ピを見つめてきたので、青ピは初春に対する苦情が言えなくなってしまった。 ようやく男性陣のコスプレが出揃った所で美鈴が『パンパンッ!』と手を打ち鳴らす。
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朝日とともに剣桃太郎は目を覚ました。 そして、自分が背を預けていたものに声をかける。 「ありがとよ」 すると、その竜はまるで人語を解するかのようにきゅいきゅいと声をあげた。 そうして立ち上がって少し体をほぐす。 野営による疲れはない。 もっとも、男塾一号生にこれくらいで疲れるやつはいないが。 そこまで考えたとき、少し離れたところで木を切る音や重いものをひきずる音が聞こえる。 (少し寝すぎたかな) 多少のばつの悪さを覚えつつも、桃はみなを手伝うべく、音のする方へと歩いていった。 「しかし、昨日はひどい目にあったよなぁ」 「まったくじゃ。飛行帽のやろう、前に家を壊したこと絶対根に持ってやがるわい」 「しかし、ここは面妖なところじゃのう。魔法なんてものが存在するとは思っても おらんかったわい。」 木を引きながら、秀麻呂、松尾、田沢の三人が会話をしている。 向こうのほうでは椿山が、その馬力を生かして、富樫や虎丸などと一緒に木を切っている。 どうやらJに飛燕と雷電は食料を調達しにいっているようだ。 伊達は一人で、その槍術を用いて石を切り出していた。 そこまで見渡したところで、今人手が必要なのは石の切り出しであると判断し、伊達を手 伝うべく歩き出した。 (魔法か。どれほどのものだろうな。) そうして桃は、召喚されたときのことを思い出していた。 空気が凍るとはこのようなことを言うのだろう。この空気は炎蛇でも溶かせまい。 ついついコルベールは現実から目をそらそうと、自分らしからぬことを考えた。 (しかし、このようなことは前例がないので仕方のないことか。) これが平民の一人であるならば、一応生物であることは間違いがないので、 迷わず契約をするように勧めたであろう。 しかし、これほどの人数の召喚となるとどうすればよいのか判断がつかない。 (そうだ。これがあった。) そこで、コルベールは、懐から一冊の本を取り出して目をおとした。 太公望書房刊『異端召喚百選!これであなたも召喚マスター』(観余頭尼屠尼瑠无著) 大変古くかつ怪しい本ではあるが、記述内容に信頼がおけることは、 今までの経験が保証している。 そこにある記述を発見したコルベールは、思わずブリミルに感謝の祈りをささげ、 ルイズに声をかけた。 「ミス・ヴァリエール。何を固まっているのです。早く全員と契約しなさい。」 その声に、生徒たちは一斉に視線をコルベールに向けた。 マジですか!正気かあのコッパゲ。 そのようなざわめきが起こるなか、ルイズは引きつった顔でコルベールを眺めると声をあげた。 「ミ、ミスタ・コルベール。や、やり直しを要求します! 第一、このような大人数では、誰と契約をしろ言うのでしょうか!」 話しているうちに、普段の調子に戻ったのか、ルイズは一気にまくし立てた。 それに、ルイズの発言には根拠があった。 (そ、そうよ。やり直しは正当な要求よ。メイジ一人につき使い魔は一つ。そう決まっているじゃない! それに、こいつら、何で裸の上に上着を羽織っただけなのよ!) ルイズにとっての不幸は、コルベールが無駄に博識なことであった。 「もちろん全員とですよ、ミス・ヴァリエール。 それに始祖ブリミルは数多くの使い魔を従えていたという信頼できる記録も残っています。 人数が多少増えたところで何も問題はないでしょう。 さあ、『コントラクト・サーヴァント』を済ませるのですぞ」 その言葉にルイズは肩を落とし、少しうつろな目をして祝詞を唱え始めた。 せめてファーストキスは、多少はまともそうなヤツで。 ルイズがそう思ったかどうかは定かではないが、祝詞を唱え終わると、鉢巻を巻いた男の方へと歩き出した。 (騒がしいな) 少しの間意識を失っていたようだ。 気配から、多人数に囲まれているのは分かっていたが、殺気などは感じないため、状況を把握することにした。 その時、集団の中から一人の少女が自分達の方に歩み寄ってくるのに気づく。 今の状況を把握するため、もう少し意識を失った振りを続けることにした。 「そうよ。これはあくまでも使い魔との契約なのよ。」 などと小声でぶつぶつ言っているようだ。 契約というと、こちらに何かさせるつもりなのだろうか。 (そういえば、ある中国拳法の奥義に、遠くから人を召喚する、という技があったがそのたぐいか。) とうとう少女は自分の前に立ったようだ。 そこで薄目を開けようとした瞬間、唇にあたたかい感触がはしる。 どうやら接吻されているようだ。 思わず、目を開けると、もう少女は他のヤツのところに向かっていた。 そして、同じように接吻をしていた。 その、少しうつろな表情が気にかかるが、このままでは状況が掴めない。 そう判断した桃は、その少女に声をかけようとした時、手に痛みが走った。 (何だコレは?) 凝視すると、左手の甲には、大団旗などにも示されてる男塾の紋章が、光を放ちながら刻まれていった。 最後に「男塾総代」と刻まれたところで、その紋章は光るのをやめた。 他の者を見渡すと、みなそれぞれ違う場所に紋章が刻まれているようだ。 人によって痛みが違うのか、虎丸などは、尻を押さえているのが確認できる。 「終わりました。」 その時、先ほどの少女が、教員とおぼしき人物に何か報告しているのが見えた。 桃はそちらの方を向くことにした。 ややヤツレタ感のあるルイズが、コルベールに終了を告げる。 そのやつれ方に同情しないといえば嘘になる。 キスのキの字も知らない少女が、いかにも汗臭い男たち数十人とキスをしたのだ。 コントラクト・サーヴァントとはいえ、自分をごまかすにも限界があるのだろう。 しかし、この誇り高い少女にそのような同情を見せるのは、侮辱になる。 そう考えたコルベールは、生徒達を解散させることにした。 解散を告げられた生徒達は、おのおの会話をしながら、空を飛んで帰路についた。 その会話に、ルイズを馬鹿にするような発言は極めて少ない。 女生徒の多くなどは、同じ女として同情する、などといった会話を繰り広げている。 そうしてコントラクト・サーヴァントの会場に残ったのは、男塾一号生たちと ルイズにコルベールのみとなった。 明らかに事情を把握していない様子の集団を、ルイズ一人に任せるのは酷である いかにヴァリエール家の三女とはいえ、これだけの集団の面倒を一人で見れる訳がない そうコルベールは判断したのだ。 「さて、それでは歩きながら事情を説明しましょうか。」 そうして不審な男達の集団に声をかけた。 これだけの集団の面倒を見るには、学院長の支援が必要だと判断したコルベールは、 オールドオスマンのところへと向かって歩き出した。 「うむ。事情は把握した。こちらからもわかる範囲で君達を支援しよう。」 「助かります。」 そうしてオールドオスマンと桃は握手をした。 来る途中互いの情報を交換したルイズにコルベールは真剣に頭を抱え込んだ。 これだけの集団が、全員そろって異世界から来たというのだ。 彼らでなくても頭を抱えたくなる話である。 しかも、その責任のうち半分くらいはルイズにあるのだ。 ……もう半分は、(話を聞く限りでは)あからさまに怪しげな光に、集団で飛び込むという 暴挙に出た彼らにあるのは間違いないが。 一方、塾生たちはというと 「な、なんだってーーー!!」 「ごっついのう」 「鬼ヒゲたちもおらんし、これぞまさしく鬼の居ぬ間になんとやらじゃな」 などと、実に多様な反応をしていた。 もっとも、驚いてはいるものの、悲観はしていないようだ。 ヴァイタリティーあふれる彼らにとっては、むしろ教官たちのいないことの方が大切なようだ。 自分が考え込んでいてもしょうがない、と結論を下したコルベールは、 オールドオスマンに判断を預けることにした。 事情を聞いたオスマンは、いくつかの条件とともに、彼らの学院への滞在許可と 帰還方法の捜索を手伝うことを約束した。 その一つが、常に誰か一人はヴァリエールの使い魔としてふるまうことであるのは言うまでもないだろう。 宿舎については、今余裕がないことをオスマンが告げると、田沢と名乗った男が 「宿については俺たちが自分で建てましょう」 というので、任せることにした。 どうやら、後ろに立っていた男達の顔が引きつったことに気がつかなかったようだ。 とりあえず、本日は使い魔用の小屋で休むように伝え、翌日朝の鐘の音が二回なったら ルイズとコルベールも含めてここに来るように言い渡し、本日は解散となった。 使い魔召喚の件から後、調子を崩され通したルイズは、普段の彼女からは信じられないことではあるが、 大変おとなしく話を聞いていた。 ……むさ苦しい男達の集団に紛れ込みたくない、というのが本音かもしれないが。 とりあえず、お休みとだけ使い魔達に告げると、次々と野太い返事が返ってきて、更に疲れがました。 (美しく、神聖な使い魔を召喚するはずだったのに!どこが狂ったのよ! 始祖ブリミルよ。これはあまりにも過酷ではないでしょうか。) 部屋に戻った彼女は、ひとしきりベッドの中で悪態をつくと生まれて初めて始祖ブリミルをののしった。 だが、思っていたよりも疲れていたようだ。 10分もたつと静かな寝息が響き渡った。 一方男達は、使い魔用の宿舎でわらの上に横たわっていた。 既に爆睡するものも多い。 歯軋りといびきが響き渡って、使い魔たちが寝づらそうにしているにも関わらずだ。 そんな中で1頭の竜が静かに立ち上がった。 (こんな環境じゃ寝れないのね~きゅいきゅい) などと思ったかどうかは定かではないが、とりあえず外で寝ることにしたようだ。 昼のうちに見つけた特等席に向かうと、既に先客がいた。 「月が綺麗だとは思わないか?」 そんな風に男が声をかけてきた。 同感したのかどうかは分からないが、きゅいきゅいと竜は鳴くと、男に近寄った。 少なくとも、悪い男ではないと思われたようだ。 竜が腰を下ろすと、男は一言断りをいれてから、竜に寄りかかった。 会話は何もない。 しかし、不思議と安心できる空気に、男と1頭の竜はいつの間にか眠りだしていた。 男達の使い魔 第2話 完 NGシーン 雷電「こ、この術はまさか!」 虎丸「知っているのか雷電!」 雷電「これぞまさしく、中国において古代より伝わる杵有漢」 かつて、唐の時代、杵有漢(しょ・うかん)という拳法の達人がいた。 国士無双と詠われた彼は、同時に多くの敵を作っていた。 多くの敵に四六時中付けねらわれるのに疲れた彼は、秘奥義神毬送りをもとに一つの奥義を生み出した。 この奥義によって、自分の代わりに戦ってくれるもの、見張りをしてくれるものなどを呼び出した彼は 以降平穏な人生を送ったという。 この故事がハルケギニアに伝わり、召喚となったのは、杵有漢に対する尊敬があったからである、 というのは、雌威璽の始祖武利彌瑠が書いているように、あまりにも有名な事実である 民明書房刊「召喚、その全て」(平賀才人著)